「ABODA」の創立者である高島郁夫さんと、デザイナーの森田恭通さん。お二人のアートとの関わり、そして実際に足を運んだ「Art Basel in Miami Beach」について、お話を聞きました。
──今日は、お二人が行かれたという世界最大級のアートフェア「Art Basel in Miami Beach」(以下、バーゼル)のお話を聞きたいです。まずはお二人とアートの関りを知りたいのですが、森田さんはアーティストとして写真の活動もされているんですよね。
森:きっかけはデザインの仕事からなんですけどね。自分がデザインした空間に、大きな壁面にモノクロの写真が欲しいなと思ったんです。しかも、具体的な数も決まっていて、7点。大きな写真を作品として7点そろえるのは予算的にも難しい上、そもそも複数の同じサイズの作品が市場にも少ないことがわかり、自分で撮ってみようと思い立ちました。世界で最も写真に厳しい街パリで作品を発表し、以来毎年続けています(コロナ禍で現在は休止中)。ミニマムな空間にぽんとあるだけで空間が成立するような写真を目指しています。
──翻って、鑑賞者としてはどんな楽しみ方をされているのでしょうか。
森:最初の頃は、わかりやすいものが好きでした。高島さんとアートコレクトイベントにご一緒させていただくようになり、だんだん好きな作品が変わってきました。服の趣味が変わるように、自分に刺激を与えてくれるものも変わるのかもしれませんね。
──高島さんは、いかがですか?アートを買う最初のきっかけは何だったのでしょうか。
高:家を建てた時、そこに飾るアートを選んでもらったのがきっかけですね。はじめは人に勧められるままに買っていましたが、少しずつ自分が好きなアートがわかってきました。投機目的でアートを買うのもいいですが、自分の目で「これいいな」と思って買ったほうが作品を大切にできるし、結果いい買い物ができていると思います。
美術館級の作品を間近で見れる
──バーゼルにはお二人で以前にも足を運んでいらっしゃるのですか?
高:はい、過去にも6、7回訪れています。このバーゼルを見に行くことを目的にしたツアーがあって、7、8人の友人たちと行くんです。
──マイアミのバーゼルの雰囲気はどんなものなのでしょうか。
高:スイスのバーゼル地区で行われている本家本元のバーゼルは作品も雰囲気も真面目なものが多いんです。マイアミは振り幅がもっと大きく、ポップなものから真面目なものまで楽しめる印象があります。街も楽しいしね。
──会場を巡るときの順番はどんなものなのでしょう。
高:まず、大きなギャラリーをチェックします。ガゴシアン・ギャラリー、ペース・ギャラリーなどがどんな作品を出しているかを見ます。3億円、4億円を超える価格で取引されるアートを出品しているので、美術館で見るような作品を目の前で鑑賞できるんですよ。このふたつのギャラリーは、お客さんを見るのも面白い。
森:その後、一通り会場をぐるっと回ります。目についた作品や、気になった作品がある場所を覚えておいて、気になったところに戻って話したり、交渉したり。
森:エディションがあるかを確認したり、余地があれば価格交渉をしたりもしますよね。
高:けっこう安くなりますよね。これはバーゼルならではです。
森:ギャラリーに行っても値引きの話はできないですからね。作品そのものを触れられるくらいの距離で鑑賞できて、更に交渉さえできるのは、バーゼルの魅力の一つでもありますね。
──出品されている作品などにあらたなトレンドや流れを感じた点はありましたか?
高:NFTのブースが出ていて、取引が一般的になってきたのを感じました。ブロックチェーンの特徴は誰が買ったかが記録されることなので、買う方にとっては誰が最初になるかが重要、という新しい世界ですよね。作家の方にはセカンダリで取引されても収入があるというメリットもあり、面白いなと思います。
森:今回NFTの作品は映像や写真がほとんどでしたが、これからもっと幅が出てくるのかもしれないですね。
好きだ、という気持ちとタイミング
──今回も作品を購入したとか。どんなものを買ったのか教えてください。
森:僕はサイ・トゥオンブリーの作品を買いました。もしかするとこの作品はプロジェクトでは使わなくなるかもしれませんが、眺めていたいなと思えるものだったので。この間届きましたよ。
高:僕はアレックス・カッツとトム・ウェッセルマンのオリジナルを2つ買いました。価値が下がらない作家であることももちろんですが、好きだからという理由のほうが大きいですね。
森:アートを買う時は、自分の中の「好き」という気持ちとタイミングに従っていくのが、僕のセオリーです。バーゼルは世界中のギャラリーが集まってよりすぐりの作品を出品するまたとない機会ですし、世界中のアートラバーの方々と出会うチャンスでもあります。その中から宝探しのように作品を探し出会えることは楽しいですね。
──これからのおふたりの活動が楽しみです。「ABODA」ではどんなプロジェクトをやられるのですか?
森:まずは群馬県みなかみ町のABODAを完成させたいですね。今から楽しみです。
高:規模や、価格の高さではない世界に一つの価値を一緒に作りたいね。やっぱり森ちゃんとは、アメージングプロジェクトをやりたいといつも思っているから。
聞き手:出川 光
「ABODA」の創立者である高島郁夫さんと、デザイナーの森田恭通さん。お二人のアートとの関わり、そして実際に足を運んだ「Art Basel in Miami Beach」について、お話を聞きました。
──今日は、お二人が行かれたという世界最大級のアートフェア「Art Basel in Miami Beach」(以下、バーゼル)のお話を聞きたいです。まずはお二人とアートの関りを知りたいのですが、森田さんはアーティストとして写真の活動もされているんですよね。
森:きっかけはデザインの仕事からなんですけどね。自分がデザインした空間に、大きな壁面にモノクロの写真が欲しいなと思ったんです。しかも、具体的な数も決まっていて、7点。大きな写真を作品として7点そろえるのは予算的にも難しい上、そもそも複数の同じサイズの作品が市場にも少ないことがわかり、自分で撮ってみようと思い立ちました。世界で最も写真に厳しい街パリで作品を発表し、以来毎年続けています(コロナ禍で現在は休止中)。ミニマムな空間にぽんとあるだけで空間が成立するような写真を目指しています。
──翻って、鑑賞者としてはどんな楽しみ方をされているのでしょうか。
森:最初の頃は、わかりやすいものが好きでした。高島さんとアートコレクトイベントにご一緒させていただくようになり、だんだん好きな作品が変わってきました。服の趣味が変わるように、自分に刺激を与えてくれるものも変わるのかもしれませんね。
──高島さんは、いかがですか?アートを買う最初のきっかけは何だったのでしょうか。
高:家を建てた時、そこに飾るアートを選んでもらったのがきっかけですね。はじめは人に勧められるままに買っていましたが、少しずつ自分が好きなアートがわかってきました。投機目的でアートを買うのもいいですが、自分の目で「これいいな」と思って買ったほうが作品を大切にできるし、結果いい買い物ができていると思います。
美術館級の作品を間近で見れる
──バーゼルにはお二人で以前にも足を運んでいらっしゃるのですか?
高:はい、過去にも6、7回訪れています。このバーゼルを見に行くことを目的にしたツアーがあって、7、8人の友人たちと行くんです。
──マイアミのバーゼルの雰囲気はどんなものなのでしょうか。
高:スイスのバーゼル地区で行われている本家本元のバーゼルは作品も雰囲気も真面目なものが多いんです。マイアミは振り幅がもっと大きく、ポップなものから真面目なものまで楽しめる印象があります。街も楽しいしね。
──会場を巡るときの順番はどんなものなのでしょう。
高:まず、大きなギャラリーをチェックします。ガゴシアン・ギャラリー、ペース・ギャラリーなどがどんな作品を出しているかを見ます。3億円、4億円を超える価格で取引されるアートを出品しているので、美術館で見るような作品を目の前で鑑賞できるんですよ。このふたつのギャラリーは、お客さんを見るのも面白い。
森:その後、一通り会場をぐるっと回ります。目についた作品や、気になった作品がある場所を覚えておいて、気になったところに戻って話したり、交渉したり。
森:エディションがあるかを確認したり、余地があれば価格交渉をしたりもしますよね。
高:けっこう安くなりますよね。これはバーゼルならではです。
森:ギャラリーに行っても値引きの話はできないですからね。作品そのものを触れられるくらいの距離で鑑賞できて、更に交渉さえできるのは、バーゼルの魅力の一つでもありますね。
──出品されている作品などにあらたなトレンドや流れを感じた点はありましたか?
高:NFTのブースが出ていて、取引が一般的になってきたのを感じました。ブロックチェーンの特徴は誰が買ったかが記録されることなので、買う方にとっては誰が最初になるかが重要、という新しい世界ですよね。作家の方にはセカンダリで取引されても収入があるというメリットもあり、面白いなと思います。
森:今回NFTの作品は映像や写真がほとんどでしたが、これからもっと幅が出てくるのかもしれないですね。
好きだ、という気持ちとタイミング
──今回も作品を購入したとか。どんなものを買ったのか教えてください。
森:僕はサイ・トゥオンブリーの作品を買いました。もしかするとこの作品はプロジェクトでは使わなくなるかもしれませんが、眺めていたいなと思えるものだったので。この間届きましたよ。
高:僕はアレックス・カッツとトム・ウェッセルマンのオリジナルを2つ買いました。価値が下がらない作家であることももちろんですが、好きだからという理由のほうが大きいですね。
森:アートを買う時は、自分の中の「好き」という気持ちとタイミングに従っていくのが、僕のセオリーです。バーゼルは世界中のギャラリーが集まってよりすぐりの作品を出品するまたとない機会ですし、世界中のアートラバーの方々と出会うチャンスでもあります。その中から宝探しのように作品を探し出会えることは楽しいですね。
──これからのおふたりの活動が楽しみです。「ABODA」ではどんなプロジェクトをやられるのですか?
森:まずは群馬県みなかみ町のABODAを完成させたいですね。今から楽しみです。
高:規模や、価格の高さではない世界に一つの価値を一緒に作りたいね。やっぱり森ちゃんとは、アメージングプロジェクトをやりたいといつも思っているから。
聞き手:出川 光